糸井 翻訳するときに気をつけてることとか、
たとえば、何かありますか?
上田 うーん‥‥そうですね。
「ドラッカーが、すごく日本語がうまかったら、
どんなふうに言うだろう」‥‥っていうことは、
いつも考えながら、訳してますね。
糸井 ほう。
上田 たとえば、ドラッカーだったら、
ここで「とても美しい」って言うだろうか、
それとも単に「美しい」だろうか。
糸井 なるほど。
上田 英語の場合、
「very beautiful」と「beautiful」をくらべたとき、
どっちが美しいかっていうと、
とうぜん「強調の副詞」がついてる
「very beautiful」のほうが「美しい」んだけど‥‥。
糸井 はい。
上田 日本語の場合、「美しい」と「とても美しい」じゃ、
「美しい」のほうが、美しいんです。
糸井 ああ‥‥。
上田 逆説的だけど。
日本語で「とても美しい」なんてのは、
たいして美しくないわけです。
糸井 なるほど、そうか。
上田 そういう、英語と日本語のちがいがあるから、
この場合の「beautiful」は
「美しい」と訳したらいいのか、
それとも「とても美しい」としたらいいのか、
つまり、
絶対的に美しいのか、相対的に美しいのか、
ドラッカーが
どっちの意味で使ってるのかを考えて、
日本語を選んでます。